泳ぐこととリズムの話

ひと月に一回は泳ぎに行っている。現役から長く離れ、意図通りの泳ぎができなくなって久しいが、それでも一応。 クロールを泳ぐとき、僕は二掻きに一回呼吸をする。その間に四回キックを打つ。おおよそのところ。左右の偏りを調整したいときには三掻きに一回…

振り出しに戻る話

はい出ました。休職です。2月の中頃から。いったい何回目で、どれだけの期間こうなってんだ? 社会人失格の烙印を押されても仕方がない。シャチハタで用意しておいてほしい。そこら中に押すからさ。落伍者の認め印を。 うつ病だと心療内科医は言った。うつ病…

許さないラスボスの話

友人に借りていたRPGをクリアした。よくわからないがかつて人間で今は憎悪のみを宿すバケモノになったそのラスボスはひたすらに「許さない……滅ぼす……許さない……ユルサナイ……!!」と繰り返していて、その憎む対象は「ジンルイを……!」とかで広すぎて、いや何…

最近はけっこう元気ですよ~って話

驚いたことに、近頃仕事が楽しい。前職や転職直後の自分のときには考えられなかった事態だ。あの当時は職場に身を置いていることそのものが負担になっていて、なんとかして仕事さぼりてえな、自分に全く非がなくて仕事にちょうどいけなくなるくらい適度なけ…

触れることかなわない話

ノートPCを新調しました。 いや前の子に何か不満があったというわけではなくて、その子、去年買ったヒューレットパッカードのENVYってやつ、シックな筐体に木目のタッチパッドがスタイリッシュで、不満点はやや重たいくらいしかなくてかなり気に入ってまして…

薬味の話

薬味が好きだ。ネギが、しょうがが、シソが、ミョウガがゆず胡椒が、もみじおろしが好きだ。薬味って言葉の意味を理解していないけど好きだ。なんか薫り高くアクセントになるものとしか思っていないけど好きだ。胡椒は薬味か? 胡椒はスパイスか。パクチーは…

まぜのっけごはん朝食の話

早起きしてすき家のまぜのっけごはん朝食を食べたから、今日は一日元気でした。 まぜのっけごはん朝食。350円で牛小皿、温玉、オクラ、かつお節、ごはんに味噌汁がついてくる。紅しょうがと七味もかけ放題。完全栄養食だ。炭水化物、野菜類、タンパク質、全…

でけ~剣を振るう話

モンハンライズを始めた。初めてのモンハンだ。 うちのハンター、「ポンコツお凛」は大剣を主にぶん回している。 武器種類が多すぎて操作方法も各々にあってよくわからなくて、いろいろ考え、合理的に導き出された最強の武器が大剣だったのでお凜は大剣を背…

パッツパツなジーパンを買ってしまう話

数学の三大未解決問題は、P≠NP問題、リーマン予想、古着で買ったジーパンのサイズ外しがち問題と言われています。言われてるったら言われてます。言われてるんですよ、知らないの? そうなんですよ、またやってしまいました。 フリーマーケットでノリで買っ…

虚無を解体する話

外の世界にそれはない。 心の中に虚無はある。 虚無は誰の心の中にも眠っている。大なり小なりの程度の差はあれど。僕の中にも。あなたの中にも。虚無は心の奥底に潜み、鎌首をもたげて狙っている。あなたが虚無に気付く瞬間を。あなたが気付いたそのときに…

救いを求める話

「何か良いことがあるといいな」 おれが今日聞いた言葉だった。 それは切実な言葉だった。 それは短期的な、例えば一万円札拾えればいいな、みたいな即物的な欲望を満たすことを望んだ言葉ではなく、普段の生活を過ごすうえでのかすかな希望を、未確定な未来…

近況とただの愚痴の話

調子が悪化してしまい、少し早めで長めの夏休みをいただくことになってしまった。 めまい、耳鳴り、動悸に吐き気、緊張感からくる身体のこわばりと震え。そしてなにより、どうしようもないほどの虚脱感。こう言った身体的症状が周期的に訪れる。正弦波の底の…

野良猫が鳴く話

ちょっと仕事でしくじってしまい、やさぐれて酒を飲んでいる。 いやしくじったのは完全に手前の落ち度であり、会社の定常的な困りごとに対して個人的に若干先走り「こんな感じで解決の可能性を見出いしました!」的なプレゼンをしたら「実用化を見据えていな…

変わるもの、変わらないもの、変えられないものの話

緊急事態宣言の延長が決まる。自粛の余波はあらゆるところに押し寄せて、この国全体が暗澹とした停滞期に潜り込んでいる。活動は中止される。無作為に動く粒子のなかに一つだけ汚染源を放り込んで、あとは熱運動に任せていたら、互いに衝突しあって汚染が直…

再び仙人風呂の話

「パワースポット」なんて言葉は、マイナスイオンや水素水と同列レベルにうさんくさくて気に入らないものではあるのだけれど、実際問題そこにいるだけで癒されるような心が洗われるような少しだけ気力を取り戻せるようなそんな場所はあるもので、それはその…

いぬやねこのうた

その温かさのような儚さのような曲を集めました People In The Box "懐胎した犬のブルース" (Official Music Video) 明日生まれ変わるから 記憶はいらない 15の犬みたいに もうすぐいなくなる The Cat Is Hard-Boiled a flood of circle 永遠について考える…

2020年とのっぺい汁と自我の芽生えた子供の話

新年も二日が過ぎようとしている。いかがお過ごしですか? 僕は昨年末から続く飲み食い三昧でお腹周りが育っています。 2020年。十の位が変わるともなると新しい時代を迎えたような気になり、実はちょっとだけわくわくもしている。2020年。20年前にようやく2…

「30歳問題」の話

ウェルベックの新刊「セロトニン」を読んでいる。46歳のアッパーミドル階級の男が、人生をやっていくのをいったん中断して、あとに残された虚無と人間関係を辿っていく、今のところはそんな話。セロトニンは一種の神経伝達物質で、欠乏した際に不安症、抑う…

近所のスーパーからDr.pepperが姿を消した話

そんなわけで、風呂上がりのおれを冷蔵庫で待ちかまえてくれるものは何もない。あの突き抜ける爽快感も、目の覚めるような香りも、何も。 そういった話をした。会社の食堂で、昼飯を食べながら。ライス小のお茶碗に山盛りにした白米を頬張りつつ、おれはこの…

二日酔いとかの話

酒に弱くなってきている気がする。 そもそもが後先考えずに日本酒だのワインだのウイスキーだのをがぶがぶいってしまうたちで、部屋で晩酌しこたつで朝まで寝落ち、を一時期当たり前のように繰り返しており、さすがにこれはと酒を買う量を絞り始めたのが多分…

ゲームはおもしろいよねって話

ブログ八か月ぶりだってさ。えへへ。 先々月からBrownDustってスマホゲームをポチポチやってる。キャラを集めて育てて戦わせるってだけのよくあるタイプのやつなのだけれど、戦闘操作はキャラを9名、5列×3行のマス目に配置して行動順番を指定するだけ、戦闘…

死んだ一匹のヤツメウナギの話

SCP財団という組織があって。めんどくさいから詳しくは説明しないけれど、彼らは超常的な物体やら場所やら現象やらを確保(Secure)、収容(Contain)、保護(Protect)するための集団であり、彼らの収容するその不思議なあれこれがSCPと呼ばれている。要は…

生きることの不可避な売春性の話

5か月ぶりくらいであるらしい。ブログを書くのが。この5ヶ月くらいの間、ひいては10月に職を転じてからの半年の間、いったい何をしていたのかというと、まあ平たく言えば鬱がひどくなったり良くなったり繰り返していた。職場環境は以前に比べれば随分と…

スピリットサークルの話 -水上悟志は次元を超える-

メチャクチャ好きな漫画であるスピリットサークルのおススメをするにあたって、まずは作者であるところの水上悟志先生の紹介から入ります。まどろっこっしいか? うるせえ、つべこべ言わずに聞いてくれ。 水上悟志。1980年生まれ(へー)。主にヤングキング…

初めてコインランドリーに行った話

洗濯30分で200円、乾燥20分で200円。相場は知らないが、これはきっと安いのだろう。洗濯機も乾燥機もなく、自分で衣服を手もみし、太陽に衣服を乾かしてもらう手間を考えると。しかし前者の200円は僕の省力にはなるけれど、後者の200円は太陽の省力にしかな…

しらける話

みんなさ、遊んでる最中に、「なんかつまんねーなー」って気持ちになったことない? 「今やってるこれ、確かに楽しいんだけれど、果たしてこれに何の意味があるんだ?」って気持ちに。 おれはあったよ。それもしょっちゅう。例えば高校の友達とシダックスで…

今聴いている音楽の話

特にやることがないので、好きな歌を集めたプレイリストをシャッフル再生し、その曲が流れ終わるまでに感想を書き上げるやつをやります。 魂の本/中村一義 一発目から良いのを引きました。中村一義のなかで12を争うくらいには好きな曲。軽やかなメロディに…

ELLEGARDENの話

復活するそうですね。ELLEGARDEN。いやいま話題にするのも流行にのっかってるみたいでヤなんですけれど、しかしELLEGARDENと言えば僕らの青春の一かけらではありませんか。こんなこと言うと年齢バレるな。まあ別に隠してないからいいか。当方27歳男性であり…

髪の毛にメッシュを入れている男の話

「いや、友達になれそうもねぇ~」 その写真を見た瞬間、俺はそう口走っていた。 高校時代の、久しぶりに会う女友達。彼女が差し出してきた今の彼氏の写真。 彼の写真を見た瞬間だった。 その髪にはメッシュが入っていた。 その写真を見たとき、俺はどうして…

間違いを見つける話

整合性のない数字の羅列をにらみ続け数時間、増える残業代とともに発見したことは「去年の自分が間違っている」ということだった。 冗長な計算式の並んだスタイリッシュさの一切ないExcelファイルを根本からつくりかえつつ、ふらりと現れた隣の部署の先輩に…