窓を拭く才能がない話

友人を乗せて車を走らせていた。豪雨だった。フロントガラスには際限なく雨粒が打ち付け、車のワイパーは忙しなく左右に揺れ続けていた。 友人は「前が見えない」と呟いた。 僕は応えた。 「前が見えない。なるほど、確かにそれは言い得て妙だ。僕らは前が見…

眠れない夜の話

ハロー。 のっけから挨拶を間違っています。時間的に。 久しぶりにFacebookを覗いてみたら、あそこは色々なもので満ち満ちていますね。各々の生活、日常、意見、娯楽、未来。目眩がします。そこに詰められた情報の多さに、処理能力が追い付かずに。 彼らの所…

一人前になった証としてマットレスを買う話

社会人になって三年目となった。社会人三年目ともなると、さすがに焦りが出てくる。私は未だに自分のことを未熟な若輩者であると思っているし、なんなら会社内を歩く時も「若輩者ですけど~?」みたいな面をして歩いている。「若輩者なんですけど~~??」…

テレビのリモコンの呼び方、あるいは各家庭環境の話

「その人がどんな家庭で育ったかは、その家庭でテレビのリモコンをなんと呼ぶかから判別することができる」 とまあ、一説にはそんな意見があります。一説には、というか、僕が勝手に拵えたものなんですけれども。 しかしながら、親と子、あるいは祖父母や孫…

閉じられた大戸屋の扉の前で姉を思う話

近所の大戸屋が潰れていた。 「やる気が出ない」という正当な理由で、今日の俺は残業を早々と切り上げてそそくさと帰ることにした。そそくさとしすぎた余り、社食で夕飯を取るのを忘れてしまった。そこで俺に思い浮かんだのは、そうだ、今日は大戸屋に行こう…

利己的な文章の話

近頃すっかりブログをさぼっていたことを思いだしたので、朝のジョイフルで一筆したためている次第であります。ジョイフルは凄い。モーニングメニューにはデフォルトでドリンクバーが付いているし、フリーWi-Fiまで使えてしまう。さらにご飯の大盛りも無料…

山口に帰る話

明けましておめでとうございます。 実家のリビングに置いてある真っ赤なソファに、毛布にくるまって寝そべった状態で「あ~、帰りたくねえ~」と呟いたところで気が付いた。 そういえば去年は、大阪に行くなのか帰るなのか、山口に行くなのか帰るなのか、ど…

炊き込みご飯に失敗した土曜日の話

炊き込みご飯が炊きあがった音が聞こえたのでワクワクしながら炊飯器の蓋を開けたら、何故だかわからないがちっとも炊き上がっていなかった。いつだってそうだ。僕は肝心なところで失敗してしまう。普通の白飯ならまだ諦めもついたろう。茶色い水に浮かぶ生…

真ん中の席から順に座ってほしい話

大きめの会場で、講演を聞く機会が今日あったんですよ。 その時、椅子がこう↓並んでたんですよね。 _ _ _ _ _ _ _ _ 横並びになった椅子がずらっと会場に並んでいて。こんな状態で「さあご自由にお座りください」と案内されるわけですよ。 そういう…

お痒いところを伝えられない話

どこかお痒いところはございませんか、と美容師さんにそう聞かれる度に、僕は「いえ、大丈夫です」と答える。実際に大丈夫で、僕の頭に痒いところは一つもない。 痒いところがあります、そう答える人がいるのだろうか? 頭部のどこかしらかに痒いところがあ…

セーブポイントでシュミテクトを補給する話

人生におけるセーブポイントがあるとしたら、それはやはり実家なのだろうと思う。 たまに実家に帰るたび、実感するのだ。ここ以上に僕を安心させてくれる場所は見つからない。一晩きりの滞在であったとしても、僕は実家で眠ることによって何かを補給している…

蕁麻疹の話

まあこれが痒いのだ。蕁麻疹。19時から20時頃になるとぽつぽつと腕や腰回り、首の裏に表れ始め、痒い。時間が経つと少しずつ増えていくために痒く、酷いときは増えた蕁麻疹が連なって巨大な蕁麻疹となり、結果痒い。 最近これが毎晩で痒くてどうしようもない…

ゴルフに嫌々行く話

ゴルフは社交の手段であり社会人として身に付けておいて当然の教養である、とそういった考え方は未だに深く根付いているらしく、俺も来週開催される社内ゴルフコンペへの参加が半ば強制的に決まった次第である。 全く気乗りしていない。何を隠そう、あまりゴ…

ひらがなを投げる話

ひらがなの「く」を投げたいと考えたことの一度や二度くらい、誰にとってもあることでしょう。投げた後の軌道が簡単に想像できる。くるくると回りながら手元に戻ってきて、きっと楽しい。何故ならば「く」、見た目がほぼほぼブーメラン*1である。同様の理由…

靴下の片方がどこかへ消える話

洗濯物かごをひっくり返した僕は、やれやれ、とため息を吐く。やれやれ、まただ。靴下が片方しかない。灰と赤のストライプ、それと合同の関係にあるはずの片割れがない。これで5足目だ。ボーイング747のシートに座った「ノルウェイの森」の主人公がやれやれ…

海苔を食べるタイミングの話

上手に海苔を食べられないことがコンプレックスだ。食卓によく上がる1袋5枚入りの海苔。僕が食べようとすると、大体余ってしまう。1枚目、2枚目まではいい。3枚目くらいになってくると他のおかずに気を取られすぎ、海苔の処理がおろそかになってしまう。気付…

今日の話

朝10時くらいからちょっとした業務のために職場まで来てさ、まあ業務自体は2時間もありゃあ終わるもので、そっから資格試験の勉強でもしようと思って、職場に残ってたんだよ。まあ全く出来なかったね。勉強。集中力もなければ思考力もない、テキストに書かれ…

t.A.T.u.の歌を思い出す話

昨晩、高校の同期と飲んでるときにt.A.T.u.の話になったんですよ。どういう流れかは忘れたんですけど、あーいたねそんなやつら、PVで少女二人がキスするやつね、Mステをドタキャンしたやつね、代わりに演奏したミッシェルガンエレファントのミッドナイトクラ…

朝ご飯を食べる話

午前5時くらいに仕事が一段落つき、自分の席で「あ"ーーーー」って言ってたら午前6時になっていた。長い。「あ"ーーーー」が長すぎる。毎日「あ"ーーーー」に1時間を費やすだけで1年で365時間、日数に直すと約15日「あ"ーーーー」とやっている計算になる。人…

横と縦の話

横井さんや横山さんや横川さんや横内さんは聞いたことがあるけれど、縦井さんや縦山さんや縦川さんや縦内さんは聞いたことも見たこともない。立井さんや館山さんはいるんだろうが、縦と横、対になるはずのこの二つが苗字界ではあからさまな依怙贔屓。横贔屓。…

煙突の話

おもしろいことが特に起こらないし、さりとて捏造できる気もしないといった理由で近頃ブログをさぼっていたわけだが、考えてみれば元々は「ありふれた、どうでもいいことを面白がってやろう」というのが俺の流儀ではなかったか。そう考えて昔を思い返してみ…

半円の重心を求める話

時間があったらそういう計算をしておいてくれ、と先輩に頼まれたので、ぱぱっと解いてやろうと思い紙とペンを取り出した。 わからない。ちっともわからない。 大学生時代初期ならばこんな問題赤子の手をねじり切るくらいに造作のないことだっただろうが、い…

這い寄るネスカフェ

【飲むと死ぬネスカフェ】デスカフェ — 鰐人 (@wani_jin) 2015年10月27日 【挽き豆包み製法により淹れたての上品な香りとコーヒー本来の味わいを実現したが飲むと死ぬネスカフェ】デスカフェ ゴールドブレンド — 鰐人 (@wani_jin) 2015年10月27日 ネスカフェ…

歯医者再通院、の話

前回の治療の際には見過ごされていた虫歯が痛み出したので歯医者に行ったところ、これは歯を抜くしかないですね、と言われた。 「ああ、FF5の主人公ですか」 「それはバッツ、今からするのは抜歯」 これで続けざまに三本の歯が虫に食われてしまったことにな…

タケノコを掘る話

正直なところ、おれはタケノコを舐めていたのだと思う。 他部署の上司がなんと別荘を持っているというので、お邪魔することになった。山に分け入り道なき道を走り抜けた先にあるその別荘の周辺では、タケノコがよく生えているという。周辺によく生えているも…

置いてけぼりの話

泣き上戸を発症した。職場の送別会、二次会の途中から俺は鼻をすすりはじめ、店を出て解散するかというところで遂にボロボロ泣き出した。頬を涙に濡らしながらタクシーに揺られて帰り、部屋に入るや否や布団に倒れこんでひとしきりしゃくりあげ、それからベ…

ココアの話

最近、頭痛がひどい。頭痛というかなんというか、鈍い痛みが顔の左側を移動する。頬骨が痛むかと思えば次はこめかみの奥がずきずき疼き、やがてそれが頭の上まで這い上ってくる、これを繰り返す。行ったり来たりで節操ない。俺の落ち着きのなさを継承したん…

とりとめのない話

最近本を読む頻度も文を書く頻度も減っている。あんまりよくないなあ、と思う。頻度が減っているから僕の表現力も御覧の有様だ。 豆が好きなので、ミックスナッツをぼりぼり食う。仕事から帰ると、リュックを置き、ズボンと靴下を脱ぎ散らかし、こたつに潜り…

歩道橋の話

帰省したら、近所の歩道橋が撤去されていた その歩道橋は交差点の東側を南北に繋いでいて 斜めに渡れるわけでもなく、かといって交差点の信号待ちが長いでもなく ほとんど誰にも使われていない歩道橋だった昨日おれが見たとき、ほとんど工事は終わりかけてい…

曇り止めとかUSBメモリとかの話

最近体調が悪いから、職場でもマスクをつけて行動している。 マスクをつけるとメガネが曇る。メガネが曇ると僕が困る。 さてさて困った困った小松菜のソテー、ということで思い出したのが水泳のゴーグルに使う曇り止めの存在で、あいつをメガネに塗りたくれ…

またまた歯医者に行く話

初診からひと月以上が経ち、年をまたいで西暦の数字が一つ増えてからも、歯医者での治療は続いている。 いつの間にか通い慣れてしまった道を寒さに震えながら僕は歩く。歯医者への道中、目に映るのは小児科の診療所と薬局、やけに洒落たカフェ、小さな焼き鳥…

「廊下に立つ」

廊下に立たされることになった。居眠りしていたせいだ。 こんな刑罰が実在するなどとは驚きだ。のび太くん以外誰も体験しないものだと思っていた。 とりあえずはテンプレートに則り両手に水の入ったバケツを持ってみたが、これに何の意味があるのか実行して…

帰っている話

かつて通学に使っていた京阪電車、その始発駅である淀屋橋。 朝、大阪から京都に向かう人々は、示し合わせたように進行方向左側の座席に座る。右側の座席は南東に面しながら線路を進んでいくことになるから、朝陽が差して眩しいのだ。その光景はまるで日陰に…

また歯医者に行く話

何故毎週歯医者に通わなければいけないのかと尋ねると、虫歯とはそう簡単に治らないものだから、らしい。 診療室のブースに入って、椅子に腰かける。歯医者にあるもののうち、背もたれが倒れるこの椅子と自動的にうがい用の水を注いでくれる給水器の二つが魅…

部屋の話・夢の話・コメントの話・タイトルの話・雑な話・ホームアローンの話・忘年会の話

部屋に帰ってくると俺のものがいっぱいあって、「ああ、ここは俺の部屋だ」と思う。俺が好きなものや欲しかったものがそこら中に転がっている。まるで俺自身を切り離して部屋中にまき散らしているようだ。ここは俺の部屋だと目印をつけるために。丁度犬が電…

チンする話

今までなんとかやってはきたのだが、「電子レンジがあればウインナーをチンして食べることができる」と気付いたのでレンジをネットでショッピングしてしまった。 おれが住んでいるのは会社の独身寮で、一階に食堂がある。食堂ではご飯を食べることができる。…

歯医者に遅刻した話

気付いたら10時半だったので、歯医者の予約に遅刻した。もっと早く来てくださいと受付で叱られ、ドリルを使って歯を削られ、そして二千何十円かを徴収された。金を払ってまで苦痛を味わうなど、特殊性癖を持つ人のためにある風俗店と変わりない。何だって…

植込みの話

雨が降っていたので、今朝は職場までテクテク歩いた。いつもなら自転車で5分足らず、風のように駆け抜ける道をのんびり15分。しかし心にゆとりはなく、職場に着く時間が遅れるせいで朝やらなければいけないことが溜まってしまうのが少し憂鬱だった。 重い気…

足の爪の話

足の爪を切るのは難しい。爪が厚いので刃が入りにくく、隣の指が邪魔をする。人間の身体は足の爪を切るようにはできていない。人間はもっと進化の過程で足の爪を切りやすいように体の形を変化させてもよかったのではないかと思うことがあるけれど、生き残る…

誰も知らない話

ヘンリー・ダーガーを知っているかい? 世界一長い小説を書いた男性のことを。 彼は幼いころ家族と生き別れたり、知的障碍者と見なされて施設に収容されたり、そこから逃げ出して何百キロも歩いて生まれ故郷に帰ったりして、その後教会で何十年も掃除人とし…

『屍者の帝国』の話(あるいは言葉と意思と、そのついでの話)

山口ではやっていない映画を観に来ました pic.twitter.com/IqJatzzqCX— 鰐人 (@wani_jin) 2015, 10月 24 ”君には、僕が見えているか” 屍者の帝国を観た。ので、感想でも書いていきたい。とりとめのない話になると思うが、同時に重要なネタバレもない話にもな…

眼鏡がどっか行く話

飲み会の後でどっか行っちゃいそうになるものと言えば財布、鍵、携帯を抑えて堂々の一位が眼鏡ですけれど、皆さんはどうやって対策してますか? あれ? 普通は眼鏡どっか行かない? そんな馬鹿な。 どう考えても眼鏡はどっか行っちゃいますよ。 それを今から…

古い靴の話

丁度セールで安くなっていたので、VANSのスニーカーを買った。と、こう言うだけでおしゃれに疎い僕はおしゃれピープルたちに馬鹿にされないだろうかと少し不安になるのだけれど、別にVANS自体はダサくないよね? VANSをABCマートで買うのはセーフだよね? こ…

アド街を見た。

アド街を見た。ほんとだよ。不意に人混みから現れたアド街は、宙をひらひら舞いながら何度か瞬いたかと思うと、フッと姿を消したんだ。嘘じゃない。僕はアド街を、見たんだ。 — 鰐人 (@wani_jin) 2014, 5月 8 アド街を見た。それ以外のことは何も覚えていな…

休日の僕と時間を奪う灰色の男たちの話

車を手に入れてからというもの船を手に入れた直後のDQ2並みに行動範囲が広がり、休みの度に島や、山や、島や、島や、山に行っている。山口県は島と山へのアクセスビリティが非常に優れている。しかし近所の島はもう行きつくしてしまったので、これからは遠…

そういうツイートのまとめ

罠にかかっていたハブを助けた翌日、胴の超長い美女が訪ねてきた。彼女は「覗かないで下さいね」と言い残して部屋に籠もり、勿論俺は部屋を覗いた。部屋の中には琥珀色に輝く液体とつぶらな瞳のハブが入った瓶が置いてあり、何もここまでしなくても、と瓶を…

砂や岩を見た話

友人二人と旅行に行ってきた。砂に登ったり穴に入ったりしたのがおよそ3割、車の運転が5割を占め、残りの2割は宿で酒を飲んでいた。 道の駅で買ったそれなりに良い大吟醸をうめえうめえと言いながら飲み、飲み足りないと宿一階の自販機で買い足した第三の…

舗装された道の話

コンクリートによって舗装された道を生まれてこの方歩き続けてきた僕らは、もはやコンクリートネイティブと呼んで差し支えない。 そう呼んだところで一体何がどうなんだって話なんだけれど、日本全国に存在する道のうち大多数が既にコンクリートでびっしり固…

「登る」

富士山を見て「うわぁ、高い!」と、エベレストを見て「うわぁ、もっと高い!」と、そうやって無邪気にはしゃいでいるうちはまだよかったはずなのに、そこをどうトチ狂ったのか「じゃあ富士山とエベレストの両方をマリアナ海溝に突っ込んだら丁度いい感じに…

降ってくる話 ・ 偽物の話

なんか降ってこないかなあ、って僕はずっと思っている。 なんでもいい。なんでもいいけれど、雨や雪みたいにありふれているものよりはもっと突飛なものがいい。UFOとか、恐怖の大王とか、飛行石を身に着けた少女とか、「おーい、でてこーい」って声とか、巨…