お話

「廊下に立つ」

廊下に立たされることになった。居眠りしていたせいだ。 こんな刑罰が実在するなどとは驚きだ。のび太くん以外誰も体験しないものだと思っていた。 とりあえずはテンプレートに則り両手に水の入ったバケツを持ってみたが、これに何の意味があるのか実行して…

そういうツイートのまとめ

罠にかかっていたハブを助けた翌日、胴の超長い美女が訪ねてきた。彼女は「覗かないで下さいね」と言い残して部屋に籠もり、勿論俺は部屋を覗いた。部屋の中には琥珀色に輝く液体とつぶらな瞳のハブが入った瓶が置いてあり、何もここまでしなくても、と瓶を…

「登る」

富士山を見て「うわぁ、高い!」と、エベレストを見て「うわぁ、もっと高い!」と、そうやって無邪気にはしゃいでいるうちはまだよかったはずなのに、そこをどうトチ狂ったのか「じゃあ富士山とエベレストの両方をマリアナ海溝に突っ込んだら丁度いい感じに…

「非平面上の非直線」

y = x。 あまりにも代表的すぎるそんな一次関数に自分をなぞらえることを許してもらえるなら、あの少女はきっと y = 2x - 15 のようなものだったのだろう。 ポケットに手を突っ込みながら口を半開きの間抜け面で変わり映えのない一本道を歩いていた僕は、x =…

「言葉の海」

彼女らは海女と呼ばれ、彼女らが海女と呼ばれるようになってからそこには「言葉の海」という名前が付いた。 海女と呼ばれるようになったのは、その出で立ちや生業が従来の海女に酷似しているからだ。彼女等はゴーグルを身に着け、籠を片手に、動きを阻害しな…

「コテージの幽霊」

ここらで一つ、僕が昔見た幽霊の話でも少ししてみようかと思う。丁度折よく、彼のことを思い出したところなんだよ。 兄貴が中学に入って部活で忙しくなるまでは、よく家族全員で旅行したもんだった。その中で最も楽しみだったのは、毎年八月上旬に訪れていた…

「手を繋ぐ」

手が生えてきた。人間の手である。誰のものとも知れぬ右手が、部屋の片隅から生えてきた。 非は確かに俺にある。ジメジメしたこの季節に部屋の換気を怠って部屋の隅にひと月分の衣類の山を築き上げていたのだから、その下から何か生えてきくるのは想定されて…