タケノコを掘る話

正直なところ、おれはタケノコを舐めていたのだと思う。 他部署の上司がなんと別荘を持っているというので、お邪魔することになった。山に分け入り道なき道を走り抜けた先にあるその別荘の周辺では、タケノコがよく生えているという。周辺によく生えているも…

置いてけぼりの話

泣き上戸を発症した。職場の送別会、二次会の途中から俺は鼻をすすりはじめ、店を出て解散するかというところで遂にボロボロ泣き出した。頬を涙に濡らしながらタクシーに揺られて帰り、部屋に入るや否や布団に倒れこんでひとしきりしゃくりあげ、それからベ…

ココアの話

最近、頭痛がひどい。頭痛というかなんというか、鈍い痛みが顔の左側を移動する。頬骨が痛むかと思えば次はこめかみの奥がずきずき疼き、やがてそれが頭の上まで這い上ってくる、これを繰り返す。行ったり来たりで節操ない。俺の落ち着きのなさを継承したん…

とりとめのない話

最近本を読む頻度も文を書く頻度も減っている。あんまりよくないなあ、と思う。頻度が減っているから僕の表現力も御覧の有様だ。 豆が好きなので、ミックスナッツをぼりぼり食う。仕事から帰ると、リュックを置き、ズボンと靴下を脱ぎ散らかし、こたつに潜り…

歩道橋の話

帰省したら、近所の歩道橋が撤去されていた その歩道橋は交差点の東側を南北に繋いでいて 斜めに渡れるわけでもなく、かといって交差点の信号待ちが長いでもなく ほとんど誰にも使われていない歩道橋だった昨日おれが見たとき、ほとんど工事は終わりかけてい…

曇り止めとかUSBメモリとかの話

最近体調が悪いから、職場でもマスクをつけて行動している。 マスクをつけるとメガネが曇る。メガネが曇ると僕が困る。 さてさて困った困った小松菜のソテー、ということで思い出したのが水泳のゴーグルに使う曇り止めの存在で、あいつをメガネに塗りたくれ…

またまた歯医者に行く話

初診からひと月以上が経ち、年をまたいで西暦の数字が一つ増えてからも、歯医者での治療は続いている。 いつの間にか通い慣れてしまった道を寒さに震えながら僕は歩く。歯医者への道中、目に映るのは小児科の診療所と薬局、やけに洒落たカフェ、小さな焼き鳥…

「廊下に立つ」

廊下に立たされることになった。居眠りしていたせいだ。 こんな刑罰が実在するなどとは驚きだ。のび太くん以外誰も体験しないものだと思っていた。 とりあえずはテンプレートに則り両手に水の入ったバケツを持ってみたが、これに何の意味があるのか実行して…

帰っている話

かつて通学に使っていた京阪電車、その始発駅である淀屋橋。 朝、大阪から京都に向かう人々は、示し合わせたように進行方向左側の座席に座る。右側の座席は南東に面しながら線路を進んでいくことになるから、朝陽が差して眩しいのだ。その光景はまるで日陰に…

また歯医者に行く話

何故毎週歯医者に通わなければいけないのかと尋ねると、虫歯とはそう簡単に治らないものだから、らしい。 診療室のブースに入って、椅子に腰かける。歯医者にあるもののうち、背もたれが倒れるこの椅子と自動的にうがい用の水を注いでくれる給水器の二つが魅…

部屋の話・夢の話・コメントの話・タイトルの話・雑な話・ホームアローンの話・忘年会の話

部屋に帰ってくると俺のものがいっぱいあって、「ああ、ここは俺の部屋だ」と思う。俺が好きなものや欲しかったものがそこら中に転がっている。まるで俺自身を切り離して部屋中にまき散らしているようだ。ここは俺の部屋だと目印をつけるために。丁度犬が電…

チンする話

今までなんとかやってはきたのだが、「電子レンジがあればウインナーをチンして食べることができる」と気付いたのでレンジをネットでショッピングしてしまった。 おれが住んでいるのは会社の独身寮で、一階に食堂がある。食堂ではご飯を食べることができる。…

歯医者に遅刻した話

気付いたら10時半だったので、歯医者の予約に遅刻した。もっと早く来てくださいと受付で叱られ、ドリルを使って歯を削られ、そして二千何十円かを徴収された。金を払ってまで苦痛を味わうなど、特殊性癖を持つ人のためにある風俗店と変わりない。何だって…

植込みの話

雨が降っていたので、今朝は職場までテクテク歩いた。いつもなら自転車で5分足らず、風のように駆け抜ける道をのんびり15分。しかし心にゆとりはなく、職場に着く時間が遅れるせいで朝やらなければいけないことが溜まってしまうのが少し憂鬱だった。 重い気…

足の爪の話

足の爪を切るのは難しい。爪が厚いので刃が入りにくく、隣の指が邪魔をする。人間の身体は足の爪を切るようにはできていない。人間はもっと進化の過程で足の爪を切りやすいように体の形を変化させてもよかったのではないかと思うことがあるけれど、生き残る…

誰も知らない話

ヘンリー・ダーガーを知っているかい? 世界一長い小説を書いた男性のことを。 彼は幼いころ家族と生き別れたり、知的障碍者と見なされて施設に収容されたり、そこから逃げ出して何百キロも歩いて生まれ故郷に帰ったりして、その後教会で何十年も掃除人とし…

『屍者の帝国』の話(あるいは言葉と意思と、そのついでの話)

山口ではやっていない映画を観に来ました pic.twitter.com/IqJatzzqCX— 鰐人 (@wani_jin) 2015, 10月 24 ”君には、僕が見えているか” 屍者の帝国を観た。ので、感想でも書いていきたい。とりとめのない話になると思うが、同時に重要なネタバレもない話にもな…

眼鏡がどっか行く話

飲み会の後でどっか行っちゃいそうになるものと言えば財布、鍵、携帯を抑えて堂々の一位が眼鏡ですけれど、皆さんはどうやって対策してますか? あれ? 普通は眼鏡どっか行かない? そんな馬鹿な。 どう考えても眼鏡はどっか行っちゃいますよ。 それを今から…

古い靴の話

丁度セールで安くなっていたので、VANSのスニーカーを買った。と、こう言うだけでおしゃれに疎い僕はおしゃれピープルたちに馬鹿にされないだろうかと少し不安になるのだけれど、別にVANS自体はダサくないよね? VANSをABCマートで買うのはセーフだよね? こ…

アド街を見た。

アド街を見た。ほんとだよ。不意に人混みから現れたアド街は、宙をひらひら舞いながら何度か瞬いたかと思うと、フッと姿を消したんだ。嘘じゃない。僕はアド街を、見たんだ。 — 鰐人 (@wani_jin) 2014, 5月 8 アド街を見た。それ以外のことは何も覚えていな…

休日の僕と時間を奪う灰色の男たちの話

車を手に入れてからというもの船を手に入れた直後のDQ2並みに行動範囲が広がり、休みの度に島や、山や、島や、島や、山に行っている。山口県は島と山へのアクセスビリティが非常に優れている。しかし近所の島はもう行きつくしてしまったので、これからは遠…

そういうツイートのまとめ

罠にかかっていたハブを助けた翌日、胴の超長い美女が訪ねてきた。彼女は「覗かないで下さいね」と言い残して部屋に籠もり、勿論俺は部屋を覗いた。部屋の中には琥珀色に輝く液体とつぶらな瞳のハブが入った瓶が置いてあり、何もここまでしなくても、と瓶を…

砂や岩を見た話

友人二人と旅行に行ってきた。砂に登ったり穴に入ったりしたのがおよそ3割、車の運転が5割を占め、残りの2割は宿で酒を飲んでいた。 道の駅で買ったそれなりに良い大吟醸をうめえうめえと言いながら飲み、飲み足りないと宿一階の自販機で買い足した第三の…

舗装された道の話

コンクリートによって舗装された道を生まれてこの方歩き続けてきた僕らは、もはやコンクリートネイティブと呼んで差し支えない。 そう呼んだところで一体何がどうなんだって話なんだけれど、日本全国に存在する道のうち大多数が既にコンクリートでびっしり固…

「登る」

富士山を見て「うわぁ、高い!」と、エベレストを見て「うわぁ、もっと高い!」と、そうやって無邪気にはしゃいでいるうちはまだよかったはずなのに、そこをどうトチ狂ったのか「じゃあ富士山とエベレストの両方をマリアナ海溝に突っ込んだら丁度いい感じに…

降ってくる話 ・ 偽物の話

なんか降ってこないかなあ、って僕はずっと思っている。 なんでもいい。なんでもいいけれど、雨や雪みたいにありふれているものよりはもっと突飛なものがいい。UFOとか、恐怖の大王とか、飛行石を身に着けた少女とか、「おーい、でてこーい」って声とか、巨…

「非平面上の非直線」

y = x。 あまりにも代表的すぎるそんな一次関数に自分をなぞらえることを許してもらえるなら、あの少女はきっと y = 2x - 15 のようなものだったのだろう。 ポケットに手を突っ込みながら口を半開きの間抜け面で変わり映えのない一本道を歩いていた僕は、x =…

良くわからないもの、例えば火の話

良くわからないものって、意外と身近にたくさんある。 地球の半径。約6000kmって、どうやって測ったんだろうか? ウィスキーの種類。僕はにわかだから煙っぽい風味があればそれだけでもう好きになる。ターミネーター2でシュワちゃんが落ちる溶鉱炉。溶鉱炉…

ぐるぐるする話

働いて得たお金が生活するために消えていく。 これは至極当たり前のことなんだけれど、妙にむなしいことのように感じてしまう。満足した生活を送るためには、生活のうちのそれなりの割合を労働に捧げなきゃならない。生活のために労働があったはずが、気付い…

落ちる話

消防署の待合室には穴が開いていて、いざというとき消防士たちはそこから飛び降りて迅速に出動する。 そんな感じの映像を見た記憶があるんだけれど、あれ、実在するんだろうか。一秒でも早く出動するためだとか。 緊急さでいえば朝出勤する時の僕もそんなに…