「ホットコーヒーが飲みたいんだけどなあ」









登場人物紹介

マスター:38歳。ジャズが好き。客の注文にはなんとしても応えるナイスガイ。喫茶店はシックで落ち着いた雰囲気でありコーヒーも美味いのだが、近くにスタバがあるのでみんなそっちに行く。かつてはメガバンクに勤めるエリート銀行マンだったが、長年の夢である喫茶店を開くために家族に相談もなく仕事を辞めたところ妻に三下り半を突き付けられた。数か月に一度、10歳になる娘と会えることが彼の人生を支えている。

僕:23歳。地方国立大学法学部の三年生。二浪。滑舌が悪い。注文の仕方が分からなくて怖いので、スタバに行けない。浪人コンプレックスのせいでうまく大学で友達が作れなかった。この前奮発して買ったアコースティックギターはFコードが弾けずに挫折したため、部屋の片隅で埃をかぶっている。ホットコーヒーをちゃんと飲めたことはまだない。