チンする話

 今までなんとかやってはきたのだが、「電子レンジがあればウインナーをチンして食べることができる」と気付いたのでレンジをネットでショッピングしてしまった。

 おれが住んでいるのは会社の独身寮で、一階に食堂がある。食堂ではご飯を食べることができる。だけど予約が必要だ。

 最近帰りが遅くなりがちなので、職場のほうで夕飯を済ませてしまった方が楽なことが多い。そういう場合、予約制というものは実に厄介だ。キャンセルするのはもったいないが、育ち盛りでないおれは晩飯を二回も食うことはできない。

 今日のように早く帰れた場合、コンビニで弁当を買うか外食をすることになる。しかしそれだと金がかさみ、予約するにせよしないにせよ、おれの中のワンガリ・マータイさんが「MOTTAINAI」と声を上げる。

 そこでレンジだ。炊飯器はある。惣菜と米ならそれなりに安く上がり、手間もかからない。給料が入ったら検討しようか、と考えていたところで冒頭の閃きだ。

 電子レンジがあれば、ウインナーをチンして食べることができる。

 ウインナーをチンしたことくらい、誰だってあるだろう。ウインナーとチンの相性はとてもいい。中の肉が熱されて膨張し、パツンと音を立てて外皮に裂け目を作る。滴る肉汁の量を最小限にとどめ、最もジューシーな状態のウインナーを味わうことのできる優れた調理法、それがチンだ。

 焼くよりも、茹でるよりも、レンジでチンがウインナーには最適である。チンしたウインナーはほぼ無敵だ。米にも合い、つまみにもなる。つまり最強だということになる。それを思い出した瞬間、おれの指は「1-clickで注文」を押していた。

 書いているうちにおれは腹が減ってきたが、Amazonからのメールは無情にもレンジの到着予定日が明後日であることを告げている。仕方がないから、今日はすきっ腹を抱えたまま眠ろう。明日の帰りにウインナーを買って、その次の日にウインナーをチンできることだけを楽しみに明日の朝、目覚めよう。

 

P.S.

 最近のレンジは大体「チン」というより「ピー」と鳴る方が多い気がするのですが、それでもレンジは「チンする」であり「ピーする」でないのは、やっぱり「ピーする」だと少し卑猥な印象を覚えるからでしょうか。