野良猫が鳴く話

 ちょっと仕事でしくじってしまい、やさぐれて酒を飲んでいる。
 いやしくじったのは完全に手前の落ち度であり、会社の定常的な困りごとに対して個人的に若干先走り「こんな感じで解決の可能性を見出いしました!」的なプレゼンをしたら「実用化を見据えていない独りよがりなものにしか見えない」とボコボコにされたってだけの話で、要は俺の視野の狭さと要領の悪さが責任だ。
 だけどまあしかし、この「独りよがり」加減って、どうやって修正すればよいんだろうな? おれ個人の課題としてずーっと、周りの人間を巻き込んでいくような、みんなを説得するような求心力の欠如ってやつがあって、それはつまりカリスマ性の欠如と、平たく言ってしまえば「人に好かれなさ」の表れとしか思えなくて、おれは自分に対して緩慢な絶望に陥らざるを得ない。それへの対策として、ほかの人には追従できないところまで知識を練り上げて自分自身が確固たる価値を作り上げる、みてえなことを考えてやってたんだけど、自分で書いてて気づいたわ、こんな傲慢な奴、そりゃ人はついてかんわな。まあこういうことを考え続けると、自分の振る舞いやら一挙手一投足に自信が持てなくなって結果として詰むんだけど。
 強い人間になりたい。今の組織だけに限った話ではなくて、シンプルにいる価値のある人間になりたい。

 

 ああ、もうめんどくさくなってきた。

 こういうことを考えて悩むことも。

 そもそも俺のスタイルって、「社会も組織も知ったことか、そんなところになじめなくとも、誰に受け入れられずとも俺はここにいる」ってやつじゃなかったけ。転職してからこっち、人に甘えすぎたかな。

 

 暑くなってきたから窓を開けて眠るようになった。昨日から、やたら猫の泣き声が聞こえる。甲高く伸びるような、自分の存在をアピールするかのような声。それが気になって眠りが浅い。

 なあお前、なんで鳴いてんだ? 周りに誰もいなくて、寂しいからか? ぞれとも怖いからか?

 猫は鳴いている。

 おれは静かに眠る。