先日見た夢と、なんにもわかっちゃいない話

「死ぬことでリセットできる」

 そんな夢を、この前見た。

 夢の中の俺は、なにかに失敗するたびに、能動的に死んでいた。死ねば、意識と記憶を保ったまま、任意の過去に戻れる。そんなシステムだった。俺は死にまくっていた。失敗などしないように。成功ばかりを引当て続けるように。

 何をもって、夢の中の俺は死ぬ基準を選んでいたのか、まったく覚えちゃいない。だけどおそらく俺は「完全無欠の最強データ」である俺を作り出そうとしていたんじゃないかと思う。夢の中の俺の考えることは、所詮俺の考えることだから、よくわかる。

 感覚的にはこんなもんだ。

 キングボンビーを引いたら一旦死ぬ。

 期間限定アイテムを取り逃したら一旦死ぬ。

 力の種の成長値が最低を引いたら一旦死ぬ。

 死ぬ死ぬ言っているが、ここで重要なポイントとして、夢の中の俺は意識するだけで死ねるようだった。「ちょっと死んどくか」、そう思いながら眠ることで、俺は死に、過去に舞い戻っていった。そこには何の痛みも喪失も恐怖もリスクなく、ただ安らかな眠りと、リセットとしての死があるのみだった。

 眠るよりも安易な死。

 

 夢はもう少し続いた。

 夢の中の俺は、どうせまたいつものように仕事で何かミスをやらかしたのだろう。「一旦死んでリセットしておくか」と考えた。

 事務所の外に出て、屋外にある階段の手すりによじ登った。二階だった。高さが足りなくて不安だったから、ちゃんと死ぬために、俺は頭から落ちるように、放物線を描くようにして思い切り飛んだ。

 痛みはなかったが、頭が割れる感覚と、何かが流れ出す感覚がした。

 薄れゆく意識の中で、俺は不安になった。

 あれ、こんな死に方で良かったんだっけ?

 俺はこれで本当にリセットできるんだっけ?

 夢は終わる。

 

 この内容から察するに、俺は未だに、ちっとも理解しちゃあいないってことなんだろう。

 死ぬことについても。

 生きることについても。