2017-01-01から1年間の記事一覧

眼鏡がいなくなった話

職場の更衣室には大きな風呂が備え付けており、その風呂に入って一息ついていたところ、僕の眼鏡はいなくなっていた。 何を言っているのか、よくわからないかもしれない。しかし文字通りの話だ。僕の眼鏡が姿を消してしまった。跡形もなく。一筆の手紙も残さ…

いい風呂とあひるの話

健康パークの入場料がいい風呂の日記念で1,126円とお買い得だったので、来ている。ダジャレにも人に益することがあるのだと感心している。 片手に携えているのは2リットルペットボトルの天然水。元気がないときは体の水分をすっかり入れ換えてしまうのがよい…

忘れ物の話

何かを忘れてしまったような、焦燥感だけがある。 たとえるならば遠足の朝だ。君は背中にリュックを背負っている。お弁当。水筒。おやつ。ハンカチ。ビニールシート。大事なものは全てそのリュックの中にある。そのはずなのに、なぜかリュックは非常に軽く、…

小国の大臣になりたい話

おれがなりたかったものといえば、郵便屋さん、カクレンジャー、水泳選手、脳外科、イワトビペンギン、球体、夜空など、いろいろとありますが、現在時点におきましてもっぱらなりたいものはといえば「お転婆な姫様に手を焼く小国の大臣」を他置いてありませ…

文学的ではない話

僕が持っている文学的な思い出は、大学に入学したあたりからぷっつりと途切れている。ここで僕の言う「文学的」とは、僕の考えうる限り最も文学に失礼な意味合いしか持たない表現で、「何やら含蓄のありそうな」程度の意味しか有していない。自分にはよくわ…

休みと、ペットショップの動物と、走り回る子どもの話

あまり正当とは言えない理由で今日もお休みを頂いた。要するに体調不良です。 職場に休みの連絡を入れ、「生活リズムは崩さないように」とのお言葉を頂いたその体で二度寝に入り、目を覚ますと12時だった。部屋に食料はなかった。溶けた鉛のように重たい頭と…

先日見た夢と、なんにもわかっちゃいない話

「死ぬことでリセットできる」 そんな夢を、この前見た。 夢の中の俺は、なにかに失敗するたびに、能動的に死んでいた。死ねば、意識と記憶を保ったまま、任意の過去に戻れる。そんなシステムだった。俺は死にまくっていた。失敗などしないように。成功ばか…

窓を拭く才能がない話

友人を乗せて車を走らせていた。豪雨だった。フロントガラスには際限なく雨粒が打ち付け、車のワイパーは忙しなく左右に揺れ続けていた。 友人は「前が見えない」と呟いた。 僕は応えた。 「前が見えない。なるほど、確かにそれは言い得て妙だ。僕らは前が見…

眠れない夜の話

ハロー。 のっけから挨拶を間違っています。時間的に。 久しぶりにFacebookを覗いてみたら、あそこは色々なもので満ち満ちていますね。各々の生活、日常、意見、娯楽、未来。目眩がします。そこに詰められた情報の多さに、処理能力が追い付かずに。 彼らの所…

一人前になった証としてマットレスを買う話

社会人になって三年目となった。社会人三年目ともなると、さすがに焦りが出てくる。私は未だに自分のことを未熟な若輩者であると思っているし、なんなら会社内を歩く時も「若輩者ですけど~?」みたいな面をして歩いている。「若輩者なんですけど~~??」…

テレビのリモコンの呼び方、あるいは各家庭環境の話

「その人がどんな家庭で育ったかは、その家庭でテレビのリモコンをなんと呼ぶかから判別することができる」 とまあ、一説にはそんな意見があります。一説には、というか、僕が勝手に拵えたものなんですけれども。 しかしながら、親と子、あるいは祖父母や孫…

閉じられた大戸屋の扉の前で姉を思う話

近所の大戸屋が潰れていた。 「やる気が出ない」という正当な理由で、今日の俺は残業を早々と切り上げてそそくさと帰ることにした。そそくさとしすぎた余り、社食で夕飯を取るのを忘れてしまった。そこで俺に思い浮かんだのは、そうだ、今日は大戸屋に行こう…

利己的な文章の話

近頃すっかりブログをさぼっていたことを思いだしたので、朝のジョイフルで一筆したためている次第であります。ジョイフルは凄い。モーニングメニューにはデフォルトでドリンクバーが付いているし、フリーWi-Fiまで使えてしまう。さらにご飯の大盛りも無料…

山口に帰る話

明けましておめでとうございます。 実家のリビングに置いてある真っ赤なソファに、毛布にくるまって寝そべった状態で「あ~、帰りたくねえ~」と呟いたところで気が付いた。 そういえば去年は、大阪に行くなのか帰るなのか、山口に行くなのか帰るなのか、ど…